最初の3週間の過ごし方

さて、その最も重要な最初の3週間の過ごし方についてである。

この点でまず、断っておきたいのは、私の場合物書きという職業柄、極端に言えば24時間、自分の時間が自由になったということである。

実は、この利点を当時の私は最大限に利用することにした。短期間にとにかく徹底して「糖質制限」を行なったのである。その結果、人より効果が早く出たことは否めない。

筆者はフリーの物書きである。一般のビジネスマンの様に有給休暇も取れない。従って休んでいれば休んだだけ、収入も減るし、生産も減る。だから短期決戦で結果を出すことに集中せざるを得なかったのだ。

休みを取っだのは正味、3週間だった。仕事のことを考えると正直、これが限度であった。それ以上休むと、月刊誌なら2ヵ月分の締め切りを逃すことになり、3~4ヵ月は収入が途絶えてしまう。それ故私は、今川義元の大群に攻め込まれた織田信長の様に、桶狭間の決戦ならぬ、糖尿病とその合併症の闘いで、敵の大将の首を取らざるを得なかったのだ。

江部医師の著作を始め、糖尿病治療に関する様々な関連書輜を集中して読んで、私はおぼろげなからに光明を見出した。「敵は、糖質にあり」。

糖質過多の食生活と締め切り重視の朝、夜もない生活を続けていた50代後半のおやじ作家にとって、これからの生涯を賭ける「大一番」がやってきた。

最初の3週間が大切と書いたが、この間に緒戦の勝利を収めないと、フリーの制約もあって、そのまま普段の生活に戻り、ずるずると後退しそうな気もした。とにかく、最初の3ヵ月で何か何でも具体的な戦勝を収める。

そう考えて、糖質制限食に臨んだ。

今でも思い出す、初日の朝食は、以前週刊現代の健康な朝食特集で、ある有名医師が食べていた「輪切りトマトと目玉焼の蒸し焼き」であった。

これは、オリーブオイルをたっぷりとフライパンに引き、輪切りにしたトマトを周囲に並べ、真ん中を空けて、そこに卵を割りほぐして目玉焼きにする。これを朝7時に起きて自分で作り始めた。まず第一食は、これで済んだ。意外に簡単で作る側か拍子抜けする程だった。

当初は、医師の指導で血糖降下剤や高血圧治療薬を併用していたから、薬を飲み、そのまま休養した。その間、枕元で江部氏の著作や糖尿病治療に関する本を読み、読み終えるとパートナーの吉村祐美の眼に止まるよう、キッチン兼リビングのテーブルの上に置いておいた。

やがて本好きの彼女も江部氏の著書を熟読し、糖質制限食を理解してくれた。こうして二人で一冊の本を読み、私が読み終えると糖尿病の最新治療についての新書類を買い求め、またテーブルの上に置いておくという生活を続けることになった。